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アビガン誕生秘話(米ペンタゴンも注目)①

2020/07/15

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 -週刊現代- 2014年11月27日記事

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/41194 >

『富士フイルム「エボラから世界を救う薬」を開発するまでの苦闘16年』



手探りの研究が始まった

富山の薬が世界を救うかもしれない――富士フイルムホールディングス傘下の富山化学工業が開発した錠剤「アビガン」(一般名・ファビピラビル)が、世界的な注目を集めている。



今年夏頃から西アフリカを中心に爆発的に流行しているエボラ出血熱はいまだ終息していないが、その理由の一つは有効な治療薬がないことだ。エボラ出血熱の致死率は50%と、毒性はすさまじく高い。エボラウイルスに感染すると、患者は7日間程度の潜伏期間を経た後、高熱を発して嘔吐、下痢、頭痛などの症状を呈し、最後は全身から出血して死に至る。

11月12日に発表されたWHO(世界保健機関)の最新データによると、すでに世界中でエボラウイルス感染者は1万4098人に上り、死者は5160人になったという。

そんな「史上最悪のウイルス」に対して「アビガン」が有効な解決策になるのではないかとの期待が膨らんでいる、フランス、スペイン、ノルウェー、ドイツではエボラウイルスに感染した患者にアビガンを含む数種類の薬が投与され、症状に改善が見られた。

フランスとギニアの両政府はエボラウイルス感染者へのアビガンの臨床試験に着手し、来年初めにも承認、そして使用される可能性が出てきた。

アビガンが世界に出荷されれば、多くのエボラ患者の命が助かることにつながる。「富山の薬売り」のDNAが世界を救う画期的な成果を挙げるのだ。だが、この新薬の開発は、もちろん一朝一夕に可能だったものではない。そこには実に16年にも及ぶ熱いドラマがあった。

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話は1998年に遡る。このとき、富山化学の研究者たちは一心不乱に実験を繰り返していた。インフルエンザなどをターゲットとした新しい抗ウイルス薬を創ること—。これが10人にも満たない研究チームに与えられたミッションだった。

富山化学総務担当部長の泉喜宣が振り返る。

「もともと当社は細菌に効く医薬品の開発に定評があったのですが、ウイルスに対する治療薬にも手を広げようと考えたんです。かといって、潤沢な研究資金があるわけではない。インフルエンザ薬に関しては、研究者がすべて手作業で効果を測定していきました」

通常、大手の製薬会社が新薬を開発する場合、自動化されたロボットなどを用いて、ターゲットとなる化合物を見つけ出すのが一般的になってきた頃だ。だが、当時の富山化学は研究所を地方都市に構える、従業員数2000名足らずの中堅製薬メーカーにすぎず、インフルエンザ薬の開発のインフラ整備に資金を注ぎ込む余裕はなかった。


「そこで2万6000種類の化合物をランダムに選んでインフルエンザウイルスに効くか、一つひとつ手作業で試していったのです。シャーレに細胞を入れ、そこにインフルエンザウイルスを入れます。その中に化合物を入れ、細胞が生き残るかどうかを調べるという単純な実験方法です。

週に600種類ずつ試し、2万回以上の失敗を経た後に偶然、ウイルスに効果のある化合物、現在のアビガンにつながる『T-705』を発見したんです。1998年のことでした」(泉)


無念の開発中止

富山化学工業は発見したT-705を本格的に試験するため、富山大学医学部の白木公康教授(ウイルス学)に共同研究を持ちかけた。白木教授が語る。



「富山化学は昔から化合物を合成する技術には定評がありました。実際、T-705の構造図を見たときに、これは薬になると直感し、共同研究を承諾したんです。大学ではインフルエンザに感染させたマウスを使って、生体実験を行いました。一番気を使ったのは、情報漏洩ですね。実は大学というのは、よく情報が漏れるところなんですよ。民間企業に比べるとセキュリティがしっかりしていませんし、多くの製薬関係者が出入りしますから。大学関係者には秘密保持の意識が高くない人もいるんです。そこで、私は実験データを大学には残さず、富山化学のほうで保管してもらいました。

実験の結果、インフルエンザに感染させたマウスにT-705を投与すると、一匹も死ぬことはありませんでした。有効性が確認できたので、2000年9月にカナダのトロントで行われた学会で私たちの研究チームが発表したのです」

だが—。この学会発表は、ほとんど話題にならなかった。世界中の大手製薬会社にT-705の製品化を持ちかけても、乗ってくる会社は1社もなかったという。なぜか。

「その頃、ちょうどインフルエンザ薬として『タミフル』と『リレンザ』が発売されたからです。当時の製薬関係者は、もう新しい抗インフルエンザ薬は要らないと考えていたんですね。

また、元々製薬会社には長期的な投与が見込まれる薬を開発したがる傾向があります。たとえば、糖尿病や心臓病、高血圧に効く薬は、飲み始めたら亡くなるまで飲む薬。企業にとっては大きな売上高が見込めます。一方、インフルエンザの薬は飲んだとしても1週間。利益の幅が薄いんですよ」(白木教授)

それは富山化学にとっても死活的な問題だった。T-705がすぐに製品化できないのであれば、このまま開発を進める意味はあるのか――。

「実はインフルエンザ薬はマーケティング面でも極めて難しい医薬品なんです。インフルエンザが流行した年は売り上げが上がり、そうでないとガクンと下がる。

そこでこのままインフルエンザ薬の開発を進めるより、違う方向に注力したほうがいいのではないかということで、2002年にT-705の開発をストップし、これと似た構造を持つ化合物の中からC型肝炎ウイルスの治療薬を見つけて開発する方向へシフトさせました」(前出・泉)


こうして、T-705はいったん「お蔵入り」となった。しかし、3年後、思わぬ形で世界中の医療関係者から注目されるのだ。

きっかけは2005年にアジアで猛威をふるった「鳥インフルエンザ」だった。鳥インフルエンザが人間にも感染し、死亡するケースが多発したことを記憶する人も多いだろう。各国の医療機関がこぞってこの病気に有効な薬がないか、試験をしていた。

そんななか、NIAID(米国立アレルギー感染症研究所)より委託を受けた米ユタ州立大学が2006年3月、T-705が鳥インフルエンザに効果があると名指しで発表したのだ。

「NIAIDが3000種類以上の化合物を試した結果、唯一T-705だけが効いたというのです。そうなると、'01年頃に考えていたマーケティング上の問題を飛び越えて、会社としてなんとしても製品化しないといけないと判断しました。

2007年から臨床試験を開始し、T-705にリソースを集中するため、今度はC型肝炎治療薬の開発をストップさせました」(泉)


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その②に続く



クエスト不動産経営管理(株) 石光良次


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